[シリーズ]沖縄基地問題:割合,沖縄振興予算への誤解?

国内旅行の定番であり、日本屈指の観光リゾートである沖縄。美しい海に囲まれた南国の島ですが、「米軍基地」という複雑な問題を抱えています。日本の安全保障と深い関係にあるだけに、沖縄県民だけではなく、国民全員が意識すべき事案です。メディアに頻繁に取り上げられる基地問題ですが、極端な感情論や左右のイデオロギーに惑わされない知識が必要です。

沖縄の基地問題は長年にわたって続いている問題です。ここ数年は辺野古移設問題を巡って県と政府の対立がヒートアップしており、メディアも頻繁に取り上げています。その中で「沖縄県vs.本土」という対立構図が強調されており、同じ日本でありながら基地問題を巡って亀裂や溝が深まりつつある印象を受けます。では、この沖縄県vs.政府、もしくは沖縄県民vs.本土という構図を描き、分断させた場合に誰が得するのでしょうか?

一番得するのは中国共産党や人民解放軍でしょう。
下記の記事群にも書いたように、中国は軍事戦略の要として沖縄を含む第一列島線の確保を目指しています。そこで最も目障りな障害となるのが沖縄にある米軍や自衛隊の基地です。太平洋に出るためには南西諸島を突破しなければなりませんが、ここに日米の強力な戦力が配備されているため、常に制約を受けます。

 

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もし、沖縄から米軍を追い出せば、最も喜ぶ外部勢力は中国です。万が一、反基地運動が反米、反政府運動に変わり、非軍事化や琉球独立までエスカレートすれば中国共産党政権の思う壺です。そこまでしなくても、戦略的要衝の沖縄で県と日米政府の対立が激化し、分断が深まれば中国は得するでしょう。基地問題を巡る対立で在日米軍の再編や自衛隊配備が停滞するのは中国にとってはこの上ない効果です。

これらを阻止するためには、基地問題を沖縄県だけの問題と捉えず、日本の安全保障の根幹に関わる国民全員の問題だと意識することが必要です。その上で、極端な感情論や左右のイデオロギーに騙されない正しい認識と知識を得るべきです。我々が基地問題に関して耳にしたり、知っていることで誤解や間違ったものが多いのも確かです。微力ながら沖縄の基地問題を取り上げることで誤解を少しでも解消して「沖縄県民vs.本土」という分断工作まがいの印象を取り払いたいと思います。

 

米軍基地の70%が集中?

よく聞く文言に、「沖縄県には在日米軍基地の74%が集中している」というのがあります。ただ、これは少し誤解を生みやすい表現です。正しくは「米軍専用基地の70%*」です。つまり、在日米軍が使用している施設や基地の中で自衛隊と共用していないものだけを指します。例えば、青森県の三沢基地や神奈川県の横田基地、横須賀基地は自衛隊と隣接・共用しているため除外されます。山口県の岩国基地や佐賀県の佐世保基地も同様です。上記の基地群は陸海空自衛隊と隣接して共用していますが、沖縄県の普天間基地や嘉手納基地はアメリカ軍のみが使用しています。もし、自衛隊と共用している基地の面積も含めた場合は、「23%」という数字になります。

 

では、23%だから少ないのか?と言われるとそうではありません。沖縄の米軍基地は沖縄本島に集中していますが、県面積の10%、本島面積の18%を占めています。自分の住む県の1割が米軍基地だと思えば、「多い」と感じるでしょう。しかも、土地の18%を米軍が使用している沖縄本島には129万人が住んでいます。生活や経済活動のための貴重な土地を占領されていると思うのも当然かもしれません。

 

沖縄県HPより

 

これらをまとめると、日本全体の面積比で見れば、沖縄県に米軍基地のほとんどが一極集中しているとまでは言えないでしょう。しかし、沖縄県自体の面積を考えれば、他県よりも「はるかに多い」「集中していて危険」という感じるのは自然ですね。

 

沖縄は予算面で厚遇されている?

米軍基地を多数受け入れている代わりに沖縄はお金の面で優遇されているとの声もあります。果たしてそうでしょうか?

最も多い誤解は「沖縄振興予算」を巡るものです。これは沖縄の経済発展や社会インフラ整備のための予算であり、ここ数年は毎年3,000億円ほど計上されています。これを指して「沖縄は他県よりも多くのお金をもらっている」と言う声がありますが、これは誤りです。

沖縄振興予算は他県にも交付される「国庫支出金」の別名です。他県の場合は各省庁に要求して交付されますが、沖縄の場合は内閣府の予算に一括計上されます。通常の国庫支出金に加えて、さらに3,000億円もらっているというわけではありません。むしろ、同じく米軍基地がある他県と比べてもズバ抜けて多い金額をもらっているわけでもなく、全国的に見ても普通の域です。

 

那覇空港の第二滑走路も振興予算で整備されます(内閣府HP)

 

しかし、沖縄県が他と比べて予算の面で一定の配慮を受けていることは確かです。でも、これにはきちんとした理由があります。例えば、公共事業などで国から補助金をもらう割合は他よりも高いです。普通は国が50%を負担するところを沖縄では90%にあたる補助金が出ます。さらに、経済振興のための特定免税制度もあります。

では、なぜこのような制度があるのか?理由は単純で、地上戦で社会インフラを破壊され、戦後のアメリカ統治などによって自立型の経済構造を確立できなかったからです。熾烈な地上戦で沖縄の社会インフラや経済基盤はズタボロにされました。そして、戦後はアメリカ統治下が長かったため、十分なインフラ投資ができず、本土のような経済発展プロセスを経験しませんでした。

例えば、本土ではインフラ整備→重厚長大産業→加工貿易産業へと発展していきました。しかし、アメリカ統治下の沖縄は米軍基地や外部からの輸入に依存した経済構造となり、輸出産業や外部との競争に勝てるだけの強い産業がなかなか育ちませんでした。日本復帰後は、高い経済成長を経験できたものの、社会インフラや自立型経済を確立するためにはまだまだ道のりがあります。そのためにも、今後は観光立県に加えてアジアの物流情報拠点としての発展を推進していきます。

 

これらの歴史のため、沖縄県はインフラ整備などに使わなければいけないお金に対する自主財源が低いのです。インフラが破壊され、自立型経済構造を確立できなかったため、県で賄える税収が低いままです。つまり、高補助率制度や免税制度は社会基盤の拡充や自立型経済を作っていく上で必要な制度であり、事情を鑑みれば「厚遇」と呼ぶのは違う気がします。誤解を恐れずに言うならば、沖縄県は他と比べて歴史的事情からインフラや経済構造の面でハンデがあるのです。しかし、それは沖縄県の責任ではなく、日本全体で真摯に向き合わなければならない課題です。

他と違い、県民の25%が犠牲となる地獄のような地上戦を経験したのが沖縄県です。沖縄戦末期に海軍司令官の大田実中将は以下の有名な言葉を残しています。

 

沖縄県民斯ク戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ

 

つまり、沖縄防衛の準備段階から県民は勤労奉仕を行い、最悪の状況と環境の中で敢闘してくれた。そのことに感謝し、日本全体と後世にきちんと伝え、沖縄県民には後ほど特別な配慮をしてほしいとの願いである。沖縄戦で想像を絶する苦難を経験し、戦後も苦闘を余儀無くされた沖縄です。先ほど述べた振興予算や高補助率制度は「厚遇」の類には入りませんが、仮に何かしらの厚遇政策があったとしても、沖縄県と県民にはあって然るべきでは?

>>>続く

画像引用元:沖縄県HP (www.pref.okinawa.jp/)
内閣府HP (www.cao.go.jp/)

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「[シリーズ]沖縄基地問題:割合,沖縄振興予算への誤解?」への1件のフィードバック

  1. 沖縄への国庫支出金+地方交付税交付金は優遇されています。
    面積、人工、原発が無い事を考慮すると相当優遇されているのは間違い無い事実です。

    優遇を認めること=基地の存在を認める事
    につながるから今後も認めないでしょうけどね。

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