[日本とTPP]国際政治から見るメリットや問題点:アメリカ離脱の影響は?

「平成の開国」とも言われ、国を二分する議論を巻き起こしたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。TPPは主に経済問題や国内問題として取り上げられることが多かったですが、国際政治や安全保障の側面もあります。アメリカが離脱した今、このTPPは日本の国際関係どう影響を与えるのでしょうか?

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TPPとは何か?

まず、基本をおさらいです。TPP(Trans-Pacific Partnership)は日本、東南アジア諸国、オーストラリアなどの11カ国が参加する経済連携協定です。貿易の際にかかる各国の関税を撤廃して、自由貿易を推進させるものです。つまり、原則として関税を撤廃することで、参加国による自由貿易圏を作り出します。元々はシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4カ国が2006年に発効した小規模なものでした。しかし、アメリカと日本の参加表明により一気に巨大な貿易圏が誕生することとなり、注目が集まりました。参加国は以下の通りです。

○TPP参加国

日本、アメリカ*、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ペルー、シンガポール、ベトナム、ブルネイ、メキシコ、マレーシア

*アメリカは2017年に離脱

 

原則として全ての関税の撤廃を目指していたものの、12カ国も参加した協定交渉はそう簡単にはいきません。国数だけではなく、各国とも守りたい産業(聖域)があるため、それを巡る激しい摩擦が生じました。例えば、アメリカやオーストラリアは日本に対する農作物の輸出を増やしたいので、当然関税の撤廃を要求します。しかし、日本としては自国の農業を守りたいので容易には受け入れられません。逆に、日本は自動車をアメリカにもっと輸出したいので関税の即時撤廃を求めますが、自動車産業の衰退を防ぎたいアメリカは抵抗します。このように、各国の利害を巡る対立や駆け引きが行われ、交渉は長期化しました。

しかし、なんとか交渉はまとまり、2016年2月には署名までこぎつけました。これでアジア太平洋、北米、南米の国を含む巨大な貿易圏が誕生するかと思われました。だが、トランプ政権誕生によって肝心のアメリカがTPPを離脱。GDP面では日米で90%以上を占めるTPPは実質的な日米FTAとも言われました。そのアメリカが離脱したことで、一気に雲行きが怪しくなりました。

 

国際政治から見たTPP?

さて、TPP問題は主に経済問題として論じられます。参加して本当にGDPが増えるかなどの経済効果を巡る議論や農業などの自国産業への影響の懸念です。自由貿易を推進する経済連携協定なので経済問題として取り上げるのは至極真っ当でしょう。しかし、TPPには国際政治・安全保障面の思惑もあるのです。

アジア太平洋の主要国が参加するTPPが成立すれば、日米などが主導して地域貿易圏のルールを作ったことになります。それは、経済面での地域秩序を構築し、推進することを意味します。つまり、アジア太平洋にTPPを出現させることは日米(とりわけアメリカ)の価値観に基づく経済ルールとシステムを地域に反映させます。これは台頭する中国を経済秩序面で牽制する意図が込めまれています。

TPPには中国が参加していません。ですが、これは永遠に参加できないわけではなく、他の国が後から参加することは可能です。ただし、その場合は発足メンバーが作ったルールと枠組みに従います。つまり、自由主義、民主主義などで比較的価値観を共有する国々でルールとシステムを作り上げ、地域の経済秩序で主導権を握るのです。これによっていずれ中国がTPPに参加する場合は、日米の価値観を反映した枠組みの下に置けます。軍事と経済は密接な関わりがありますが、軍事面で日米同盟 vs. 中国ならば、経済面ではTPP vs. 中国でしょう。

 

→関連記事:アメリカのリバランス政策とは?

 

むろん、中国がこのような動きを座して見るわけがありません。実はTPP以外にも16カ国が参加するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の構想があります。こちらは日本やオーストラリアが参加しているもの、中国が主導的な役割を担っています。そして、TPPとは逆に、アメリカが参加していません。RCEPは中国版TPPなのです。そして、米中はそれぞれTPPとRCEPの名の下、アジア太平洋地域の経済秩序を巡って綱引きをしていました。水面下で、どちらが21世紀のアジア太平洋の経済ルールとシステムを作るのかを争っていたのです。日本は両方に参加していますが、本命はもちろん日米が主導するTPPでした。

 

アメリカの離脱で日本はどうする?

日本にとって予想外かつ痛いのは主導するはずのアメリカがTPPを離脱したことです。ある意味、身勝手で振り回された感しかありませんが、覆水盆に返らずです。今は残された選択肢を最大限活用すべきでしょう。

まず、TPPについてですが、アメリカの離脱によって規模やインパクトは一気に萎みました。それでも、アジア太平洋の主要国が11カ国参加している事実は変わらず、現在は残された国で発効に向けて交渉している状況です。主導的役割は日本やオーストラリアが担い、とにかくTPPを発効してアメリカの姿勢が変わるのを待つようです。日本として今後、トランプ政権との日米FTAに向けた交渉が始まる予測があります。しかし、容易に交渉が身を結ぶとは思えず、仮に次期政権まで長引いた場合はアメリカがTPPに戻る可能性もあります(希望的観測ですが)。とりあえず、日本主導でTPPを発効させ、日米FTAでは粘り強く交渉するしかないでしょう。

問題はRCEPの方です。アメリカが離脱したTPPよりも影響力と存在感が高まっています。そのため、中国主導による一大経済圏の出現との声がありますが、参加国を見れば違った見方ができます。確かにRCEPは中国主導の感が否めませんが、日本、オーストラリア、ニュージーランド、インドなども参加しています。自由主義かつ民主主義体制のこれらの国と連携して、中国一辺倒の価値観や思惑の反映を減衰させるべきでしょう。そして、ベトナムやフィリピンなどの「反中」傾向が強い国も取り込んで、日本がいわゆる「チェック役」を果たすべきです。そうした意味でも、日本がRCEPに参加した意義はあるといえます。今後の動向に注目ですね。

 

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