新シルクロード構想/ユーラシア連合構想,ロシアと中国の野望?

先日中国とロシアによって10年に渡る交渉が合意に達した。

天然ガスの巨額契約で両国がようやく合意。さらにその後、上海沖で軍事演習を行うなどなにかと中露の関係強化が話題になっていますね。日本のメディアも「中露蜜月」などを報じていますが、果たしてそうなのでしょうか?今回は二つの大国、中露の関係に焦点を当ててみましょう。

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中国とロシア、どちらもそれぞれの地域の大国であり、その影響力は大きいです。しかも両国はどちらも広大な国土面積を持ち、隣国でもあるため、長い国境線を共有します。そのため、過去には国境紛争が起こるなど深刻な問題もありました。しかし、国連安保理でも協調めいた行動を取る両国はなにかと「仲が良い」とか「準同盟」と見られがちです。確かに中国はロシアから多くの武器や軍事技術を輸入しており、定期的に中露軍事演習も行っています。

しかし、前回の記事でも書いたようにロシアは中国の仮想敵国であるベトナムやインドにも積極的に武器を輸出しています。さらに、中国によるロシア製兵器のコピー問題(例えばロシア製戦闘機を購入してそれベースに自称「完全国産、自国開発」の戦闘機を作って他国に輸出するなど)が問題化しており、ロシアもこの大きなお客さんに素直に喜ぶというわけにはいかないようです。

中露間での商談にはいつも値段交渉が壁として立ちはだかります。実際今回のガス契約が10年という歳月を要したのも中国側による値切り要求とガス価格を維持したいロシア側の思惑が真っ向から対立したためでした。これは兵器輸出の際にも問題化しており、中国が最新のSU-35戦闘を24機購入する問題でも大まかには合意しているものの、値段を巡って調整が難航しているとのことです。

このように中露による商談は必ずしも順調とは言えないでしょう。特に国力の差が年々開きつつあり、ロシア側としては自国より圧倒的な経済力を持つ中国が契約で頑固なまでに値切りを主張してくるのに不信感を抱いているようです。ロシアとしては製品を積極的に輸出して経済成長を遂げたいがその肝心の製品の価格が下げられては不本意でしょう。

軍事演習にても日米が毎年行う合同演習とは違い、互いの実力を知る場として利用しているものでしょう。実際、軍事演習は互いの実力や能力を測るために活用されるのが一般的です。それに加えて軍同士の交流を深めて現場レベルの信頼関係構築のきっかけを作るものです。そのため仮想敵国同士が同じ合同演習に参加している場合もあります。中国海軍がリムパックに参加した例のように。そのため、有事の際に連携して敵の侵攻を阻止することを明確な目標としている日米両軍に比べて中露両軍はあくまで救難活動などでの連携や現場同士の交流・信頼関係構築を目的としたものでしょう。中露は「同盟」ではないので。

 

さて、中国の習近平国家主席は「新シルクロード構想」なるものを提唱しています。これは中国から中央アジア・ヨーロッパにかけて一大経済圏を建設しようというもの・具体的には中国の臨海部から中央アジアを得てヨーロッパまで至る長大な陸上物流ルートを建設してこの地域間の貿易を促進しようという計画です。まさに太平洋からバルト海までの巨大な陸上物流網。高速鉄道、高速道路、パイプラインを使って中国~中央アジア~ヨーロッパを繋ぐようです。実現すれば人口30億人の巨大な経済圏の出現となります。中国はこの経済圏を「新シルクロード経済ベルト」と呼び、中央アジア諸国に構想を持ちかけています。中国としては以下の利益を期待してます。

  • ヨーロッパへの中国製品輸出の促進
  • 中央アジアからのエネルギーの確保
  • 中央アジアやヨーロッパへの影響力の増大

 

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しかし、この構想に対してロシアは内心では不安視思っていないでしょう。なぜならば

  • この構想は主にロシアを迂回している
  • 中国の中央アジアや旧ソ連諸国への影響力が強まる
  • ロシアの「ユーラシア連合」構想と相反する可能性がある

ロシアは自国の勢力圏に外国の影響力が及ぶのを嫌います。これは第二次世界大戦に熾烈な独ソ戦を経験して外国の軍隊にモスクワまであと一歩のところまで来られたことから生まれた一種のトラウマでもあります。スターリンは戦後、東欧諸国や中央アジア諸国、東アジア諸国(モンゴルや北朝鮮)を西側陣営に対する防壁としました。つまり自国の影響力が及ぶ「緩衝地帯」の存在がロシアの安全保障にとって重要なのです。ウクライナへの固執を見ても明らかでしょう。

プーチン大統領は旧ソ連諸国を集めて「ユーラシア連合」という経済圏を作り上げようとしています。この構想はロシアの安全保障のためにも周辺国を自国の勢力圏に確実に組み込むというもの。現在、このユーラシア連合にはカザフスタンとベラルーシが参加しており、タジキスタンやアルメニア、キルギスも入る公算が高いです。お分かりでしょうか?このユーラシア連合の構成国として考案していた国々は中国の新シルクロードの通り道でもあるのです。つまりユーラシア連合と新シルクロード構想、これらに組み込まれる国々が被るのです。一方はロシア主導、もう一方は中国主導。どちらが主に中央アジアを舞台とした主導権を握るか、中露の夢はここで対立しています。特にユーラシア連合でロシアに次ぐ2番手として期待されていたウクライナを失ったロシアはもうこれ以上の勢力喪失を望みません。

 

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さらに、中国の新シルクロード構想はシベリア鉄道や北極海航路による物流促進を狙うロシアにとって経済的な脅威です。ロシアとしてはシベリア鉄道や北極海航路を使って貿易を促進して、さらには極東ロシアの開発を進めたい算段。しかし、新シルクロードが実現すればロシア側を通る物流は思ったよりも多くないでしょう。北極海航路はかなり利用されるでしょうが、ここも前記事で述べたように中国の影響が入りつつあり、ロシアにとっては心地いいものではありません。

このようにロシアにとって中国は経済的にも安全保障面でも潜在的な脅威でもあるのです。互いの利害が衝突する可能性を秘めた関係のため、「同盟」のような蜜月関係に発展することは考えにくいですね。決定的な対立もない、もしくは避けるでしょうが、完全に手を組むこともないでしょう。

こうなると日本とロシアの関係も気になりますね。ロシアとしては極東ロシア開発のために日本の投資、技術を欲しています。そして日本はガスの販売先を開拓する上で有望なパートナーとなりうる相手です。事実、サハリンから北海道を通るガスのパイプラインを建設する案もあります。

安全保障面でも北方領土の問題はあれども、日本を膨張する中国を牽制するためにも「利用」したいという思惑も少なからずあるでしょう。日露は2013秋に初めて互いの外交と防衛担当の閣僚による2+2を開催しました。ここでは積極的に安全保障に関する率直な意見を交換するようです。

 

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旧ソ連時代と比べる日露関係ははるかに進んではいますが、やはり両国間には隔たりが大きいようです。しかし、日露関係は潜在的可能性を大いに秘めたものだけに今後に期待ですな。もちろん日本としては中国、ロシア両者の動向を冷静に分析、見極めた上で国益に合致するような関係を構築していくべきでしょう。

 

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「新シルクロード構想/ユーラシア連合構想,ロシアと中国の野望?」への2件のフィードバック

  1. 単純に考えて「プーチン氏はタダの経済ロードと考えているだけだし、軍用にいきなり使えるかというとそうじゃないから騙されてやってるだけ、裏切れば裏切ったで直ぐに制裁できるようにしておくのがプーチン流儀。」

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