[敵地攻撃能力?]自衛隊の島嶼防衛用高速滑空弾,対艦誘導弾とは?

防衛省が要求する来年度予算の中に新兵器の開発費がありました。気になるその中身は「島嶼防衛用高速滑空弾」と「島嶼防衛用新対艦誘導弾」のための技術研究予算です。長い名前で何やら分かりづらいですが、要するに新型の対地ミサイルと対艦ミサイルです。後者はともかく、前者は自衛隊に敵地攻撃能力をいよいよ本格付与する動きに見えます。

島嶼防衛用新対艦誘導弾とは?

まず、新型の対艦ミサイルについてですが、これは敵の射程外から攻撃する亜音速兵器であり、まさに「アウトレンジ戦法」です。来年度は77億円かけて基礎技術の研究をするようですが、見た目は従来の対艦ミサイルと違って大型化かつステルス化しています。

出典:防衛省

従来の対艦ミサイルよりも射程が大幅に伸び、ステルス効果によって被撃墜率も下がります(残存率の向上)。まだ射程がどのぐらいになるか詳しくは分かりませんが、同様のミサイルでアメリカ軍が開発中のもの( LRASM)は最大800kmです。

もし射程が800km近くもあるならば、これら新型ミサイルを南西諸島に配備するだけで、中国沿岸部までもが一気に射程圏内に入ります。つまり、東シナ海を遊弋する中国海軍艦艇はほとんどが射程に入り、中国側にとっては悪夢でしょう。しかし、果たして日本がここまで中国を刺激する射程を採用するかどうか。

昨今の北朝鮮情勢を受けて韓国軍の対地ミサイルはアメリカから射程800kmに延伸することが許されました。そう考えると日本も決して「ありえない話」ではないでしょう。むろん、仮に射程800kmにすれば北京の反発は凄まじいでしょうが。

12式地対艦ミサイルよりもはるかに強力になるはず

アメリカ軍が試験運用中のLRASMはB-1爆撃機、F-35戦闘機、そしてイージス艦などからも発射可能です。そのため、今回開発する島嶼防衛用新対艦誘導弾も同様ならば、自衛隊の対地攻撃能力は一挙に向上します。従来の対艦ミサイルよりもはるかに長射程で残存性に優れたものが完成するはずです。

陸上自衛隊は世界でも珍しい地対艦ミサイル連隊を運用していますが、海上自衛隊は対水上打撃力が弱いと言われてきました。新型ミサイルの装備によってぜひ陸海空3自衛隊の対艦打撃能力を飛躍的に向上してほしいものです。対艦打撃能力が向上するだけで、我が物顔で日本近海に出没する中国海軍に常時大きなプレッシャーをかけることができます。そして、このミサイルは対地攻撃用にも改造できそうなので、初めて有力な敵地攻撃能力を保有することになります。

島嶼防衛用高速滑空弾とは?

むしろ、こちらの方が気になりますね。

島嶼防衛用高速滑空弾はまだ情報が少ないですが、こちらは完全に「対地攻撃用」の兵器になります。つまり、自衛隊はもう「敵地攻撃能力」を保有する意思を明らかにしたということです。名目上は自国領土の奪還作戦用なので「敵地」とはなりませんが。

出典:防衛省

射程に関しては、宮古島・石垣島・沖縄本島から尖閣諸島まで届く300km〜450km前後になるのではないかと思われます。こういう兵器の話が出ただけで、中国に対する抑止力になります。水陸機動団などと合わせて、いよいよ日本が本気で離島防衛に取り組む意思を明白にし、そのための装備開発を公にしたのですから。こうした装備を持つだけで、日本は本気で占領された離島を奪還して領土を守るという意思表示にはなります。

ただし、これは「高速滑空弾」であり、巡航ミサイルのような部類にはなりません。攻撃方法としては、発射後しばらくして、ロケットモーターが切り離され、先端の弾頭が滑空飛行します。おそらく、弾道ミサイルのように高い入射角で突入し、目標に命中します。まだ情報が少ないので続報が分かり次第、追って記事を更新します。

そもそも敵地攻撃能力とは?

最近話題になる「敵地攻撃能力」ですが、本来は冷戦時代に議論を済ましておくべき事案でした。日本は専守防衛なので基本的には相手が撃ってくるまで反撃や攻撃はできません。しかも、反撃といっても、日本に接近してくる敵軍やミサイルを叩くだけで、その策源地は攻撃できません。これでは敵が自国から次々と新手を繰り出し、自衛隊が消耗して力尽きるのが明らかです。

そこで、敵の根拠地を叩くのは米軍が担います。ただ、現在のようにアメリカが徐々に衰退したり、来援まで時間がかかる状況では日本が「盾」、アメリカが「矛」という役割分担も限界に来ています。

実際、アメリカは有事の際に一旦グアムに下がって態勢を整えてから出撃する構想を練っています。その間の防衛は日本に任せるという案です。そのため、今までのように米軍に「攻撃」を任せるだけでは済まないでしょうし、そうした時代は既に終わりが近づいています。

敵地攻撃能力は違憲か?

こうなると憲法9条との整合性が問題になりますが、この件に関して日本政府は既に50年以上も前に見解を出しています。1961年の国会委員会にて、当時の鳩山一郎首相は以下のように述べています。

「わが国土に対し、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨だとは考えられない。」

「誘導弾などによる攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的に自衛の範囲に含まれ、可能である。」

つまり、日本が自国防衛のために敵基地を攻撃することは「合憲」であり、あくまで「自衛権」として認められているという見解です。筆者自身の考えとしては、憲法9条はあくまで「紛争解決のために武力を使わない」という基本精神を謳っており、「有事の際は黙って滅亡しろ」と示唆しているわけではないと思います。もし「座して自滅を待つ」のが趣旨の憲法ならば、害悪以外の何物でもないですし、不要です。

さらに、日本を攻撃してくる敵の基地を叩くことは「個別的自衛権」の範疇に入るので、議論のある「集団的自衛権」とは関係ありません。個別的自衛権に関しては国民的なコンセンサスがあるので、これに基づいて敵地攻撃能力を保有することは特に法的な問題はないはずです。もっと言えば、個別的自衛権も集団的自衛権も日本が加入している国連憲章第51条で「固有の権利」として認められています。

敵地攻撃能力の問題点

さて、敵地攻撃能力とは基本的に敵の基地を叩くことであると説明しました。しかしながら、現在は敵基地のような静止目標ではなく、移動式のミサイル発射基のような動的目標の方が脅威度が高いからです。

例えば、動かない敵基地が目標ならば、巡航ミサイルや今回開発するような高速滑空弾でも成果は上げられます。しかし、北朝鮮が最近用いているような移動式発射台の場合はその難易度が一気に上がります。移動する目標を追尾し、正確な位置を把握するには現在日本が運用している警戒監視システム(偵察衛星や哨戒機)では無理があります。

アメリカですら、移動式の目標を掴むのが簡単でないので日本は尚更です。そのため、一からそうした運用能力を構築するのはあまり現実的ではないでしょう。時間的にも予算的にも可能なのは、アメリカ軍の警戒監視システムに自衛隊の敵地攻撃能力を組み込み、「一体化」して対処する事です。つまり、米軍が「目」、自衛隊が「矛(限定的)」となるわけです。これが現時点で実現可能な敵地攻撃能力でしょう。

 

画像引用元:www.mod.go.jp/(防衛省HP)

 

1 2 ・・・次のページ

スポンサードリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です