【2014イラク最新情勢】過激派イスラム国とは?オバマ・アメリカは?

この頃、国際社会を騒がせている中東のイラク情勢。過激派のイスラム国がイラク北部を制圧して首都バグダードに向けて進撃中とのことですが、政府軍、クルド人部隊、シーア派民兵も加わった混沌とした戦闘が繰り広げられています。

 

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今月に入ってイラクのイスラム過激派ISIS(ISILとも)が北部を瞬く間に制圧して国際社会に強烈なインパクトを与えました。このISISとは一体何者なのでしょうか?

 

イスラム国(ISIS)は正式名称「イラクとシャームのイスラーム国」もしくは「イラクとレバントのイスラーム国」の略であり、シリア、イラク北部などを拠点に活動するイスラムスンニ派過激派です。イスラムには二つの宗派があり、少数派のシーア派は開祖ムハンマドの子孫のみを正統なる指導者として考え、多数派のスンニ派は歴史上存在したそれ以外の者を指導者として容認します。要するにイスラムの指導者が開祖の子孫であるべきか、それ以外でもいいかを巡る問題です。しかし、この問題は長年イスラム教徒間の火種となりました。

シーア派は圧倒的に少数派ですが、主にイランやイラク南部に多く、現在のイラクの政府、マリキ政権もシーア派です。このシーア派重視の政権がスンニ派過激派であるイスラム国のイラク侵攻の要因の一つでもあります。

 

イラクのマリキ元首相(シーア派)

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イスラム国はアルカイダ系国際テロ組織と言われがちですが、実はアルカイダ本家とは袂を分かっており、アルカイダよりも過激で残忍です。指導者のアブ・バクル・アル・バグダディはかつてはバグダッドの大学に通う貧しい学生でしたが、現在ではイスラムの原理よりも勝利を重視する最強過激派の首領となっています。この勝利を優先させる理念が同じスンニ派であっても邪魔者であれば排除するという凶暴性に繋がっています。実際、捉えたイラク政府軍捕虜を大量に殺害する動画や写真が公表されています。

 

かつては米軍の掃討作戦などで勢力を衰退させていたイスラム国ですが、シリア内戦において一気に勢力を回復・拡張させました。これはシリア内戦の混乱を利用して武器や外国人戦闘員を確保、石油を産出する町を制圧して資金力を増大させたためです。イスラム国の特徴はシリア内戦においてシーア派のアサド政権にはもちろん、反政府体制にも攻撃を加えていることです。つまり、イスラム国は自分以外の勢力のほとんどを敵に回して戦うという今までの過激派とは違う特徴があります。

 

そしてこのシリア内戦で得た武器、人員、資金、そして実戦経験を基に今月上旬にイラク北部への侵攻を開始しました。驚くべきなのはわずか1週間足らずでイラク第二の都市、モスルを陥落させたことです。この時、モスルを守るイラク治安部隊(政府軍)はほとんど敵前逃亡のありさまであったようです。その後も北部の各都市を陥落させながら首都バグダッドに向けて南進。最新の情報によると現在はバグダッドから北へわずか60kmまで進軍したとのことです。

 

緑の斜線部分がイスラム国の勢力圏です(英語ですが・・・)

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さて、イスラム国のここまでの勢力拡張を許したイラク治安部隊ですが、装備面では治安部隊(以後政府軍)の方が圧倒的に優れていました。イラク政府軍はイラク戦争によって旧イラク軍が解体された後に新設された部隊で、米軍から戦車や装甲車などの武器供与、訓練を受けました。そのため、装備を見れば米軍のハイテク兵器を保有しています。しかし、肝心の兵士の士気や国家への忠誠心は芳しくないようで最新の武器を捨てて逃亡しました。そのため、これら米国製の武器がイスラム国によって鹵獲され、使用されるという結果になりました。つまり、イスラム国は米国製の戦車や装甲車、ヘリコプターといった正規軍並みの武器を手に入れたのです。事実、これらの武器の鹵獲・使用がその後の快進撃に寄与しました。しかし、前述のように捕虜になれば容赦なく拷問、そして殺害をされる可能性が高いので政府軍としては恐怖でしかありません。

 

イラク治安部隊(陸軍)のM1A1戦車

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イスラム国によって窮地に立たされているマリキ政権ですが、潰走した政府軍を再編して奪還作戦に出ています。これに加えてイラク国内のシーア派指導者が「武器を取って抗戦せよ」という布告を発したため、各地からシーア派民兵が武器を手にイスラム国との戦闘に向かっています。政府軍と合わせたその数は最大20万人と言われています。現在は首都から100km圏内の各戦線でイスラム国と交戦状態に入ったとのことです。

 

さらに複雑なのはクルド人部隊の存在です。クルド人とはシリア、イラク、イランにまたがって存在する民族のことで、アラブ人やペルシャ人とは異なる民族です。彼らは長年抑圧されており、自分たちの国家の樹立を夢見てきました。イラクでもクルド自治政府を発足させ、勢力圏内にある石油利権を巡ってマリキ政権と対立していました。そのクルド人たちは長年抑圧と抗争を経験してきたため、独自の軍事組織を持っています。特徴的なのはこのクルド部隊はイラク政府軍よりも経験があり、自分たちの勢力圏を守るために士気が旺盛です。クルド部隊は今回の混乱に乗じて勢力拡大を狙っており、一度イスラム国占領下に入った油田都市ティクリートを奪還しました。

 

政府軍と違い、クルド部隊、別名ペシュメルカは統制が取れており、末端の兵士まで士気が高いようです。死をも恐れず、故郷の土を防衛することに誇りを感じるペシュメルカはイスラム国との戦闘でも戦線を維持しており、イラク政府にとってはある意味救世主でしょう。対するイスラム国はシリア経由で実戦経験豊富なチェチェン人も多く参加している模様です。このため、イスラム国はアラブ人、チェチェン人、その他外国人などが入り混じる混成部隊です。イラクは現在、スンニ派過激派イスラム国、シーア派のマリキ政権軍、シーア派民兵、クルド人部隊の四者が入り乱れる内戦の渦中にあります。

 

こういったイラクの危機に対して数年前までイラクに駐留していたアメリカの反応は鈍いようです。オバマ大統領は「数日中に決断をする」と言い残して休暇に入り、ゴルフをする始末。空爆に備えて米海軍の空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」とミサイル巡洋艦をペルシャ湾に派遣したものの、18日には情報不足を理由に空爆を見送るとの方針を出しました。イラク政府への支援は行うようですが、果たしてどれほどの効果があるかは疑問です。このオバマ大統領の迷走ぶりに対して野党共和党や各有力新聞は「弱腰」「無能」などと批判しており、大統領自身の支持率も過去最低の41%となりました。

 

ペルシャ湾に派遣した米空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」

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イスラム国が首都に迫る中、同じシーア派で隣国のイランが支援をすると示唆しました。1980年代に長期にわたるイラン・イラク戦争を経験した両国ですが、ここは共通の敵であるイスラム国を掃討するために共同戦線を組むようです。

すでにイランの精鋭部隊である革命防衛隊の一部部隊がイラクに入り、イラク政府軍に対して指導を行っているとのことです。ここで気になるのが、最近欧米に対して融和的な姿勢を見せ始めたイランとアメリカの協力の可能性です。

イラン革命以来の犬猿の仲である両国ですが、ここにきてイスラム国というまたしても両者にとって共通の敵を倒すために手を組む可能性があるということです。アメリカ側は軍事協力は否定していますが、米軍地上部隊を派遣しないと明言し、空爆すら見送るアメリカとしてはイランの地上部隊はイラク防衛のために「一時的な味方」となりえます。「敵の敵は味方。」これは国際社会においては常識です。

 

イランのロウハニ大統領

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首都周辺を巡る攻防がこの瞬間も激化していますがここ数日は注視するべきでしょう。特にアメリカの動向が今後の決め手を握るカギと言えるでしょう。個人的にはイスラム国を完全に撃破するには米軍による空爆と情報提供、イラク政府軍、シーア派民兵、クルド人部隊、イランの援軍による連携した地上掃討作戦が有効的かと思われます。しかし、空爆は民間人をも巻き込む可能性が高く、根本的には過激派を生む温床であるシリア内戦を解決しない限り今回のような事態は再発しかねません。中東はまさに戦火と混沌に包まれています。

 

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